教育長あいさつ 令和6年7月号
今月の「一語一会」は、私が恩師として慕う、初任校でお世話になったK先生の一言、「20年間続けて子供のことがほんの少しだけわかったような気がする」です。
私が初任の時に仕えた学年主任のK先生。2年1組担任。国語科担当。バドミントン部顧問。毎日のように放課後遅くまで部活動を指導されていました。
ある日の夕刻、部活動の生徒たちも下校し、誰もいないはずの2年1組にK先生の姿を見つけました。薄暗い教室で、K先生は黒板を背にして教室を見まわしていました。時にホウキをもって掃除をし、時に生徒の椅子に腰を掛け、時に深く考え込むようなしぐさを見せ…。5分くらいだったでしょうか。なぜか私は声をかけることができませんでした。
職員室に戻って勇気を出して聞きました。「先生、何をされていたんですか?」。K先生は照れくさそうな笑みを浮かべこう仰いました。
「自分は部活動の後必ず教室に行き、クラス全員一人一人の顔を思い浮かべることにしている。あいつ今日は元気がなかったな…、こいつ部活やめたいって言ってたな…、この子の母親元気になったかな…。あの子は今日の授業で大活躍だったそうだな…。これを20年間続けて、最近になってほんの少しだけ生徒たちのことが分かったような気がするんだ…」。
我々は「児童理解」「生徒理解」という言葉を日常的に、当たり前のように使います。しかし「理解する」とはそんな簡単なものではないはずです。K先生は20年間毎日毎日、「わかろうとする努力」を続けられ、それでもなお「ほんの少しだけ」「わかったような」「気がする」と仰ったのです。
私も彼のまねをして放課後5分間を教室で過ごすようにしました。そうしたら生徒たちの「見えない心」が見え、「聞こえない声」が聞こえるようになってきました。
K先生こそ私の「真の恩師」です。
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