教育長あいさつ　令和7年2月号

今月の「一語」は「僕は映画がまだよくわかっていない」です。

1990年、第62回アカデミー賞で名誉監督賞を受賞された映画監督黒澤明氏。スピーチで仰った言葉が「このような賞をいただいて大変光栄です。しかし僕がこの賞に値するかは心配なのです。なぜなら僕は映画がまだよくわかっていないからです」。

　監督は当時80歳。いくつもの名作を創られ、そしていくつもの名誉ある賞を受賞され、世界の誰もが「巨匠」と認めるような方の言葉です。

　私の身近にも黒澤監督と同じ思いを語られた方がいらっしゃいました。初任校でお世話になった学年主任のK先生です。
　毎日毎日、放課後の誰もいない教室に身を置いて、生徒一人一人の顔を思い出しながら一日を振り返る…。生徒との対話を惜しまず時に共に涙を流し、時に共に笑い合い、時に共に悩み、時に共に感動を分かち合う…。職員室内で最も生徒を思い、そして最も生徒から信頼される存在の先生でした。
そんなK先生が仰った言葉です。「たくさんの時間を共に過ごすことで、ほんのちょっとだけ彼らのことがわかったような気がする」。

　黒澤監督とK先生。私ごときが評するのはおこがましい限りですが、このお二人こそまさに「プロ」。
「プロとして学び続けよ！」…。お二人からのメッセージは私の背筋をいつも伸ばしてくれています。