教育長あいさつ 令和2年3月号

ページ番号2000021  更新日 2020年8月30日

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写真:教育長

祝辞 小学校6年間、義務教育9年間を終えて新たな世界に飛び立つ君たちへ

また明日 今日を境に またいつか(酔花幻)

世界中で蔓延している新型感染症は、君たちが心から大切にしていた卒業式にも影響を与えた。一緒に学び、生活した後輩たちからも、記念すべき今日という日を祝福してほしかっただろうし、未来に向けた力強い一歩を踏み出そうとしている自分自身を家族全員に見届けてもらいたかっただろう。義務教育最後の授業に臨んでいる真剣な表情を地域の人たちに示したかっただろうし、6年間、9年間の想いを込めた歌声を、自らの成長を支えてくれた全ての人たちの心に届けたかっただろう。

生涯一度しかない小学校の、また義務教育修了というハレの日を、このような形で迎えざるを得なかったことについて、君たちの想いを考えると、教育長の心もチクチクと痛む。

しかし、今回の出来事をこう考えることはできないだろうか。「君たちが『つらい思い』を引き受けてくれたからこそ、我が国の感染拡大が最小限に抑えられている」という解釈だ。

厚生労働省はこう分析をしている。「若者世代の感染による重症化へのリスクは低いが、症状の軽い若者が重症化のリスクが高い人に感染を広めてしまう可能性がある」と。そして若者たちにこう訴えている。「人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで多くの人たちの命を救える」と(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)。

学校は何百人もの子供たちが学び、生活を共にする場だ。当然感染リスクがある。今回の臨時休校は、君たちの健康と安全を守るために、また感染拡大を阻止するために、私たち教育委員会が苦しみ、悩みながらも選択した措置だったのだ。

感染状況は現時点でも収束状態にはなく、臨時休校が感染拡大を防ぐ要因になっていたか否かは立証できない。しかし私は、かけがえのない友や先生との時間を過ごすことができないつらさに君たちが耐えてくれたおかげであると信じたい。そして感染拡大を防ぐために、君たちがそんな『つらい思い』を引き受けてくれたことに心からの感謝の想いを伝えたい。

私は君たちの卒業式に参列ができない。本当ならば立派に成長した君たちの姿を胸に焼き付け、教育委員会として祝意と激励の言葉を直接伝えたかったがそれは叶わなくなった。それでも何とかして想いを伝えたい…。その一心でこの原稿を書いている。是非一読してほしい。

幼き心にはちきれんばかりの緊張を抱えて迎えた小学校の入学式から、はや6年、そして9年。たくさんの出来事があった。たくさん笑い、たくさん涙を流した。たくさん友達と協力し、たくさん喧嘩もした。たくさん感動し、たくさん打ちひしがれた。たくさん決意し、たくさん夢を抱いた。しかしその分たくさん反省もし、たくさんの挫折もした。だから君の心は、頭は、体はたくさん成長した。この一つ一つの「たくさん」があったからこそ、今の君がある。全ての「たくさん」が君の血となり肉となっているのだ。

「たくさん」は君一人では決して得ることができない。友達がいて、後輩や先輩がいて、先生がいて、親がいて、近所のおじさんおばさんがいて…。家庭があって、学校があって、まちがあって、社会があって…。君を応援する人たちが「たくさん」いたからこそ経験できた。「たくさん」の宝を持つ清瀬で生まれ、育ったからこそ経験できた。このことを決して忘れてはならない。感謝の気持ちを決して失ってはならない。

これからの人生もきっとこんな「たくさん」を経験するはずだ。人間、できれば「よいこと」がたくさんあってほしい。いつでも笑って過ごしていたいだろう。しかし涙が止まらない時もある。誰にでも優しくしたいだろう。しかし時として相手の心を切り裂くような残酷な言葉を発してしまうこともある。後悔などしたくないだろう。しかし振り返ってみれば満足よりも後悔のほうが多いことに気づく。

でも涙の後には必ず笑顔がやって来る。残酷さの裏側には温かさがある。小さな勇気と正しい心を持てれば、後悔を繰り返さないよう自らの心を奮い立たせることもできる。こんなことを「たくさん」繰り返しながら、これからも君たちは少しずつ、しかし力強く伸び続けていくことだろう。

6年生は中学校へ、中学生は高校を含めたそれぞれの進路へ、階段を一段上がろうとしている。これから君たちが出会うであろう「たくさん」の出来事にはすべて意味がある。賢く、豊かで、健やかな自分を作る材料になる。6年間、9年間の「たくさん」を宝に、これから経験する「たくさん」としっかりと向き合いながら逞しく成長していってほしい。いや、きっとそうしてくれるだろう。

卒業生諸君の未来に幸あれ! 卒業おめでとう!

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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