教育長あいさつ 令和元年8月号

ページ番号2000028  更新日 2020年8月30日

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写真:教育長

輝けよ ただ我武者羅の 奏者(プレイヤー)たち(酔花幻)

全国の吹奏楽部員にとって「勝負の8月」がやってきました。そうです! 吹奏楽コンクール! 地方によって様々ですが、東京都では全都から500校以上がエントリーする予選が行われ、その中からたったの14校が東京都大会へコマを進め、勝ち進んだ2校だけが全国大会の出場権を手に入れることができます。

演奏するのは課題曲と自由曲の2曲。ステージ上の時間は12分間。彼らはこのたった12分間を決して代えがたい宝にすべく、全力で、力一杯、苦しんだり悲しんだり、喜んだり感動したり、様々な想いを抱きながら練習に取り組んできたのです。夢をかなえるために力一杯生きる姿は年端の行かない中学生であっても神々しくすら感じます。

今月のホームページは、そんな彼らに贈る手紙です。同時に目標に向かって我武者羅に生きることが難しくなった、私をはじめとする「大人」と呼ばれる皆さんに届けたい手紙でもあります。一読ください。

全国の吹奏楽コンクールに向けて頑張っている中学生諸君へ

いよいよコンクールの夏がやってきましたね。私は過去、吹奏楽部顧問として、みんなと同じ夏を過ごしました。そんな元顧問から、全力で頑張る君たちへ一つの言葉を贈ります。それは「流した汗は決して裏切らない」という言葉です。

コンクールのステージはたかだか12分間。日常の生活の中では12分間なんてアッという間に過ぎ去っていく。ちょっとボンヤリしていたらいつの間にか時間がたっていた…、という経験は誰にでもあるはず。普通に過ごしていたら「たかが12分間」なのです。

しかしみんなは、この「たかが12分間」をとっても重要な大切な、何物にも代えがたい、そしてこれまで経験したことがないような12分間にしようとしている。つまり「されど12分間」を送ろうとしているのです。

同じ12分間なのに、なぜ「たかが」が「されど」になったのだろう。それはこの12分間のためにみんなは誰にも負けないような努力を重ねてきたから。12分間のために一人一人が自分自身と戦い続けてきたからです。

みんなは今日この日まで、どれだけの汗を流したのだろう。どれだけ先生から怒られ、どれだけ反省し、どれだけ「なにくそ!」と思ってきただろう。一つの音が満足に吹けないことでどれだけ悔しい思いをし、一つのリズムがたたけないことにどれだけ自分を情けなく思い、一つの音程が合わないことにどれだけ挫折しそうになり、一つのメロディを満足に演奏できないことにどれだけあきらめそうになったことだろう。

でもその都度、もう一度楽器を手にし、もう一度立ち上がり、もう一度歩きはじめ、小さな喜びを感じ、小さな満足を手に入れ、ほんの少しだけ上達した自分に気付き、「自分もまんざらでもないかも…」とほんの少しだけ自信を手に入れ、「仲間っていいよな…」と少しだけ素直に思い、「音楽をやっている意味」をほんの少しだけわかり、「力一杯表現する」ことの喜びをほんの少しだけ感じ、「努力することの尊さ」に生まれて初めて感動し…。

でも翌日にはまた挫折し、あきらめ、悲しみ、悔やみ…、そしてまた立ち上がり、歩き始め…。「たかが12分間」を「されど12分間」にするためにみんなはこんな数か月間を送ってきた。たくさん汗を流してきた。

その結果、みんなは人として「成長」した。本気の目標を掲げれば自分は力を尽くせることを知った。自分はどれだけ頑張れる人間なのかを知ることができた。4月の頃の自分と比べると、ちょっとだけ根性が身についた。力一杯やればその後に大きな満足が得られることを体験できた。困難に出会っても顧問の先生や先輩、そして友がいればクリアできることを学んだ。目標に向かって全員が力を合わせれば、少しばかりの高い壁などは乗り越えられることを知った。友達の素敵な一面を見つけることができた。後輩との信頼関係を作ることができた。顧問の先生がみなさんに注ぐ大きな愛情を確認することができた。音楽って素敵だな…、と心から思うことができた…。

これらはすべて「成長」です。その度合いは人それぞれで構わない。他人と比べる必要など全くない。吹奏楽をやる前の自分と今の自分とを比べて、どんなに小さなことであっても、どんなにわずかであっても、一歩であっても半歩であっても前進できればそれは間違いなく成長。胸を張ってよい。12分間のために流した汗の分だけあなたは成長したのです。

「成長」したのは人だけではありません。みんなが奏でる音楽も、流した汗の分だけ「成長」しているのです。

みんなは吹奏楽部員。だから「音」と「音楽」の違いは分かるよね。「音」には心はないが「音楽」には心がある。「音」に「心」を込めるのは私たち人間。コンピュータには絶対にできない。でも人間の「心」が豊かでなければ音楽に「心」など込められようはずはない。

では人の「心」はどうやって豊かになるのか。それは「たくさん」のことを「たくさん」経験し、「たくさん」感じ、「たくさん」考えること以外にはない。

みんなはコンクールに向けた練習を通してたくさんの喜びを経験した。反面、たくさんの悲しみにも打ちひしがれた。たくさんの感動も挫折も、たくさんの達成感も悔しさも、たくさんの成功も失敗も体験した。たくさん悩み、たくさん苦しんだ。たくさん話をし、たくさん考えた。この「たくさん」がみんなの心を大きく成長させたのだ。

そしてこれらの「たくさん」が音楽に「心」を宿す。音楽に「生命」を与える。「心」あふれる音楽は人に感動を与える。「生命」みなぎる音楽は聴く人を元気にする。知らず知らずのうちに笑顔になっている、なぜかわからないけれど涙があふれてくる…。こんな「素敵な音楽」を奏でられるようになる。

あなたたち中学生には、高校生や大学生、もしくはプロの吹奏楽団のような「うまい演奏」は必要ない。そんな演奏は大人たちに任せておけばよい。純粋でまっすぐな「心」、弾けほとばしるような「生命」にあふれた音楽こそ、あなたたち中学生が奏でるべき音楽なのです。少しくらい音を外しても、音程がくるっても、みんなにはそんな音楽を、ホール一杯に響かせてほしい。いや、きっと私が願うまでもなく、君たちは堂々と胸を張ってそんな「素敵な音楽」を聴かせてくれるはずです。

ステージに乗って指揮棒を上げる前、顧問の先生はきっとみんなに微笑みかけてくれるはず。緊張の極致かもしれないがみんなも先生に「ありがとう」の気持ちで、そしてホールのお客さんたちに「私たちの音楽を聴いてください」の心で微笑み返すこと。

そして指揮棒が振り下ろされたら一つ一つの音に「たくさん」の想いを込めて、一つ一つの音を、フレーズを、リズムを心から大切にして、「されど12分間」を心から楽しむこと。

最後に「されど12分間」が終わって立ち上がった時には、堂々と真正面に顔を向け胸を張って笑顔で拍手を受けること。

吹奏楽コンクールに向けて力一杯の日々を送っている諸君。流した汗は決して裏切らない。この数か月間で皆は確実に成長した。「素敵な音楽」を心から期待しています! 

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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