教育長あいさつ 令和3年12月号

ページ番号2004262  更新日 2022年4月28日

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写真:教育長

 

「君だけのやる気スイッチ」

 

 

 私は産経新聞を購読しています。いずれの新聞にも「投書欄」が設けられており、同新聞も「談話室」というタイトルで読者の主張、想いや願いが掲載されています。毎週月曜日は「ひこばえクラブ」(「ひこばえ」とは樹木の根元にある成長枝のこと)と名付けた小中高校生による投書コーナーになります。

 少し前の情報ですが、11月29日の同欄に上杉 直さん(8)という名前とともに、「清瀬市小学生」という文字を見つけました。清瀬市の小学生が産経新聞という日本を代表するメディアから評価されたのです。すごいことです。

 採用されたのは左のような絵。恐らく上杉さんが今、最高に興味・関心があるのは「将棋」なのでしょう。将棋を指す相手は友達? それともおじいちゃん? もしかしたら将棋クラブに入っているのかな? なんで「将棋」が好きになったの? 藤井聡太君のことをどう思っているのかな? 将来は「棋士」になりたいのかな? 小2なのに「将」の漢字が書けるのはすごい!(6年生で習う漢字です)等の思いが巡ります。

 全国紙に取り上げられて、きっと上杉さんにとっても「やったね!」の思いでしょう。「なんで選ばれたのかな?」と自己分析をすることでしょう。自信がつきます。もっと将棋に対して関心が出るかもしれません。このことをきっかけに新聞に目を通すようになるかもしれませんし、今度は「文章」で投書してみよう…、など次の目標ができるかもしれません。学校は、家庭は子供たちにこういった「やる気の種」を手に入れる機会をどんどん与えてあげたいものです。

 人間は(子どもは特に)、一つの出来事をきっかけにやる気になったり、逆にやる気を失ったりします。例えば私の教え子のN。彼は小学校時代に自作したパズルをみんなの前で褒められたことで自信を持ったことから数学に興味を持ち今では大学の准教授。同じく教え子のSは中学校時代は手が付けられないほどの「悪ガキ」だったにもかかわらず、家庭科の保育実習でどの生徒よりも幼児がなつき、その扱いを保育士さんから褒められたことで専門学校に進学し保育士になった。

 その昔、「栄光ゼミナール」という進学教室のコマーシャルで「君だけのやる気スイッチ」というコピーがありました。「やる気スイッチ君のはどこにあるんだろう 見つけてあげるよ君だけのやる気スイッチ~」というコマーシャルソングを覚えている方も多いと思います。

 A君にはA君の、BさんにはBさんのスイッチがある。その場所も形も、押すタイミングも、押す強さも一人一人違います。実はそれを最も知っているのは「親」。なぜなら生まれたときから今日に至るまで、ずっと我が子に寄り添ってきたのだから。どう言えば意欲を持つのか、いつ働きかければやる気になるのか、それを親として経験し続けてきたのだから。

 でも多くのの親はそんな視点で子供を見ずに、宿題をやらない、片づけをしない、親の言うことを聞かない、などの「現象」だけで子供を何とかしようとします。「勉強しなさい!」「口答えするな!」「約束を守れ!」の繰り返し。

 そう言い続けても子供はいっこうに勉強しないし、口答えもする。約束を破る。だから頭にくる。感情が先行して怒鳴る、怒る…。これでは「やる気スイッチ」どころではありません。

 だから親も勉強してもらわなければならないのです。「我が子育てのプロ」になってもらわなければならない。でもそれは大変難しい。子供の「教育」とは違って親の「学び」は義務ではないし、強制できるものではないから。そこで登場するのが「教育のプロ」たる教師です。

 教師は教科指導のプロでもありますが、教育というチャンネルを通して一人一人の子供の「やる気スイッチ」を見極めるプロでもあるのです。あらゆる場面で子供と関わりながら、個々の子供が必ず持っているスイッチを探すのが「プロ教師」の使命でもあり責任であるはずです。

 「休み時間は職員室に帰ってくるな。子供と語れ!遊べ!」。私が初任のころに先輩からよく言われていました。今考えてみると、休み時間に子供と無駄話をしたり遊んだりするのは「目的」ではなく、授業とは違うかかわりから子供を知り、理解し、何に興味があるのか、どう語り掛ければよいのか、すなわち「やる気スイッチ」の場所や押すタイミング、押す強さを知るための「手段」だったのです。

 授業中机間指導をしながら子供と関わるのも「やる気スイッチ」を探すための一つの手段。配膳や掃除を一緒にやるのも一人一人の特性を知るための一つの手段。冒頭の上杉君のような学校外の活動について知ることも、その子の興味・関心を知り「スイッチ」をどう押すかを知るための手段。

 教育委員会も、なかなか見えずらい個々の子供の「やる気スイッチ」を、保護者や教師が、そして子供自身が見つけられるような機会、どこにスイッチがついているのかを見極めることができる場を、できる限り数多く用意しようとしています。

 その一つが石田波郷俳句大会。令和3年度ジュニアの部には合計6,647句もの作品が寄せられ、そのうち各選者による特選、入選作が、またその中から小学生の部、中学生の部それぞれ3句ずつが「大賞」「市長賞」「教育長賞」に選ばれ、去る12日(日曜日)にアミューホールで表彰を受けました。

 自らの句が披露され、それに対して専門家から高い評価を受け、実行委員長や教育長、市長から賞状を手渡され、多くの大人たちから拍手をもらった彼らはきっと「誇らしかった」はずです。もしかしたら「自分の感性や言葉の力は自慢できるものなのかもしれない…」と感じたかもしれませんし、「よし、次はもっと良い句を作ってみせる!」「将来、言葉に関係する仕事に就けたらいいな…」「褒められるのは気持ちがいいからほかの事でも頑張ってみよう…」と決意や希望を抱いたかもしれません。まさに「やる気スイッチ」が「ON」になる時と場がこの表彰式だったのではないかと思うのです。しかし「真なるやる気スイッチON」はこの後が勝負です。

 なぜならスイッチONで灯った「やる気」という明かりは、その輝きや持続力に個人差があるからです。一つの「ON」の出来事をきっかけに、心の「自信」や「エネルギー」を煌々と輝き続けられる子供もいるけれど、多くの子供はそうはいきません。今回の表彰も、その場でスイッチが「ON」になったとしても、時間の経過とともに「一つの思い出」として記憶に留めるだけで終わってしまう、という子供も少なくないはずです。だから多くの人たちからの「継続的な働きかけ」が必要なのです。

 「賞をもらったあの句は本当に素晴らしいね」「あの句を詠んだ時の心の中はどんな様子だったの?」「表彰を受けたときどんな気持ちだった?」「他にどんな句を作ったの?」…。改めて評価したり賞賛したり、振り返らせたり思い出させたり、次のステップに導いたり決意を言語化させたりする働きかけこそが、「持続可能なやる気スイッチON」を実現するのです。

 R3年度「歯の作文コンクール」で第五中学校の2年奥津聡太君が優秀賞を受賞しました。これからから税の作文・標語コンテストの発表も、命の教育フォーラムもあります。数多の新聞社が紙面にしている投書欄は365日受け付けています。子供たちが活躍する場面は、すべて「持続可能なやる気スイッチON」のチャンスなのです

 学校、家庭・地域を含む社会総がかりで彼らを評価、称賛していただければ、これほどうれしく素晴らしいことはありません。
1月HP原稿 教育長からの年賀状「新しい年を迎え『よし、今年こそは!
 

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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