教育長あいさつ 令和2年11月号

ページ番号2002474  更新日 2020年12月10日

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写真:教育長

 

 

「子供たちの感じる心」

 

 

 

 

 石田波郷俳句大会の入選作品が決定しました。公表前なので具体的に作品を紹介するわけにはいかないもどかしさを感じるのですが、いずれも素晴らしい「感性の塊」。子供たちの「感じる心」そしてそれを「表現しようという想い」には胸が熱くなるほどです。

 私は俳句に関して全くの無作法者。「評」などできようはずもありませんが、「珠玉」とはこのような作品を指すのだということが分かります。「素晴らしい!」という言葉しか出てきませんが、彼らには我々大人(少なくとも私)にはない力が育っていることが分かります。
 だから小中学生を相手に年甲斐もなく「うらやましく」なります。身の回りのことをこんな素敵な眼差しで見つめてみたい、自分の心の中の風景をこんな思いがこもった言葉で表現してみたい。聞こえる音、漂う香りをこんな鋭く豊かで瑞々しい感性で捉えてみたい…。

 幼き子供は誰もが身の回りの目に映るもの、聞こえる音、食べ物の味、漂う香り、全身で感じる温度、先生の言葉、友達の行動、親のしぐさ…、すべてに興味・関心を持ちます。疑問を持ったり感動したり、言葉でうまく表現できなくともうれしくなったり悲しくなったり、楽しくなったり落ち込んだり、心が晴れやかになったり沈んだりするのです。
 

 子供たちは自らの心に宿った思いや願いに共感してほしいと願っています。面白いことは一緒に面白がってほしいし、「なんでだろう…」と感じたことは一緒に解決してほしいと思っているのです。自分の感じ方を認めてほしいし「疑問」に感じたことを褒めてもらいたいと願っているのです。だから彼らは「こう思うの! ああ感じるの!」と繰り返し話をするし、「なぜ? どうして?」としつこいばかりに聞いてきます。
これは大人には決してできない子供の特権。大人が同じことをやったら人格を疑われます。それ以前に、我々大人でも世の中は知らないこと、分からないことだらけなのに、「常識」に縛られて疑問を感じなくなっているのです。疑問があったとしても体面を気にして「なぜ?」と素直に言えなくなる。照れくささ、恥ずかしさ、プライドが先に立ち、自らの心の内を表出しなくなるのです。
 

 大人になると普段目にしている風景が当たり前になります。時に秋の夜長に聞こえてくる虫たちの歌声にも気づきません。時に季節が変わり木々の緑が茶色く変化してもそれを感じません。気づいていたとしても、時間に追われてじっくりと自らの揺れる心を見つめたり、それを言葉にして表したりする余裕がなくなります。こんなことを繰り返していくうちにどんどん「感性」が枯れていく。「ものを見る目」が濁っていくのです。
 「そうなんだ、そう思ったんだ、すごい!」「へ―、そんなふうに感じたの?」「今あなたはこんな気持ちなのかな…」「その例え、とっても面白いね!」「先生も思いつかなかったな」「なんで疑問に感じたのかな?」「こんなことも不思議だよね」「どうすればいいのかな?」「この本を読んでみたらわかるかも」「お母さんも一緒に考えるね」…。このように教師や親が子供と同じ目線に立って「こう思うの、ああ感じるの」「なぜ?どうして?」と向きあってくれることで子供は安心して自分の思いや願いを語ることができるようになるのです。感じたこと、発見したことを素直に表現できるようになるのです。疑問を探し出す眼、探求することを面白がる心が育っていくし、大人になっても衰えることがない「感性の根っこ」が形作られていくのです。

 「当たり前のことだから分からなくていいの」「時間がないからあとでね」「そんなことお母さんも知らないわよ」「何度もうるさいね」「…(無視)」こどもの素直な想いをしっかりと受け止められない教師、疑問に対して真面目に取り上げずに切り捨ててしまう親、感動や発見の喜びを共有できない大人のもとでは子供は決して育ちません。そんな経験を重ねた子供は二度と「なぜ?」とは聞かなくなってしまいます。

 波郷俳句大会で表彰されたたくさんの子供たちはすべて恵まれた家庭環境にあったのでしょうか。この環境がなければ彼らのような句は創れないのでしょうか。いやそれも違うでしょう。そこには波郷事務局による俳句出前教室の力があります。教師方の粘り強い指導の力があります。学校の、教育の力が子供の能力を伸ばしているのです。家庭の力は「成長の根っこ」。でも学校や地域にその根っこを補ったり一層力強く育てたり、大輪の花を咲かせてくれたりする力があることは絶対に間違いありません。

 表彰されるたくさんの子供たち、そして惜しくも選には漏れたけれど、7,233もの作品を応募してくれた市立小中学校の子供たちは、我々の学校教育の成果そのものでもあるし、決して忘れたくない「清瀬の誇り」でもあるのです。
 

 大きな力を持った「俳句」という教育活動を、清瀬ではいつまでも大切にしていきます。
 

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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