教育長あいさつ 令和7年9月号
今月の「一語」は「時短では子供は育たない」です。ある講演会で聞いた話。ご紹介します。
在来線を使って新幹線で東京から大阪まで行くとすれば約9時間、それが新幹線では2時間22分。そして2027年に開通予定のリニアモーターカーを使えば何と67分。新幹線は「有限の時間を最大限効率的に使って生産性を上げる」という経済発展の象徴です。
今の世の中「時短」「タイパ」ブーム。宅配便業界は注文を受けてから如何に短時間でユーザーに届けられるかを競っているし、冷凍食品は「時短レシピ」の典型。SNSの絵文字は「時短コミュニケーション」だし、映画を2倍速で鑑賞する若者も増えています。
子育てもスピードの時代。母親が子供に思わず言ってしまう言葉の第一位は「はやくしなさい!」。教育もスピードの時代。時間をかけて辞書や辞典のページをめくらなくてもスマホに話しかけるだけで疑問が解決できるし、検索をかければ時間をかけずとも優れた実践者の指導案を手に入れられる。
「本当にこれでいいの?」と思ってしまうのは私だけではないはずです。9時間電車に揺られれば67分では見えない景色を見ることができるし、じっくりと時間をかけてコミュニケーションを交わせば相手の本質が見えてきます。
百科事典のページをめくる中、ふと手が止まったページから関心が広がったり、知識が深まったりすることもあるし、子供の顔を思い浮かべながら「ああでもない」「こうでもない」と、書いては消して、消しては書いて創り上げた指導案は必ず教師の「成長」を保証してくれます。
そもそも「人が育つ」「人が学ぶ」はゆっくりじっくりとした時間軸の中で、紆余曲折、試行錯誤、失敗と成功、一歩一歩、一つ一つを繰り返しながら実現していくもの。非効率を許せない大人、いや社会になってしまっているのではないでしょうか。「効率性」「時短」「合理的」の中だけでは教師も子供も決して育たないのです。
一日一回だけでも「非効率」な時間を過ごす。私は今挑戦中です。
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