教育長あいさつ 平成30年5月号

ページ番号2000043  更新日 2020年12月4日

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写真:教育長

子育ては「面倒」なもの?

さわやかな 香過ぎ去る 五月空(酔花幻)

「日経ビジネス」は私の愛読雑誌。行き帰りの電車内で目を通します。「教育の関係者がビジネス雑誌?」と思われるかもしれません。もともと社会を動かすようなビジネスリーダーの人となりには興味があったのですが、世界情勢の動向、経済の流れ、ICTの潮流、新たなビジネスの萌芽…、これらを知らなければ教育が社会から取り残されてしまうのではないか…、との思いからです。

「面倒くさいを狙い打て」が特集された同誌5月14日号に非常に興味深い記事が載っていました。「消費はしたいが面倒くさいのはいや」という新しい消費者にスポットを当てた記事。

今、車、洋服、ブランドバッグなどのシェアリングが大きなビジネスになっています。自前の洋服を持てば保管するのが面倒、保管場所もクリーニング代もかかる。流行を見取ることも面倒。シェアすればその悩みは一挙に解消ということ。

最近ではペットシェアや家事代行サービスのようなスキルシェアまであるとのこと。こういうサービスを積極的に活用する人たちのことを「シェアラー」と呼ぶそう。2025年の世界のシェアリング市場規模は何と6700億ドル(73兆円)にもなると予想されています。これは我が国の一年間の税収とほぼ同規模。

確かに人間誰もが面倒くさがり屋。面白くないことに時間をかけるのはいや。煩わしい人間関係にとらわれるのも嫌い。「シェアリング」は人間の心理を突いた興味深いビジネスモデルですが、この「面倒くさい」が子育てまで侵食してきてしまっていると感じるのは私だけでしょうか。

最近では「子守アプリ」のダウンロード数が急増しているとのこと。子守唄を歌ってくれるだけでなく、赤ちゃんの泣き声に自動反応してくれ「落ち着く音」を聞かせてくれるアプリもあるそう。赤ちゃんにとって一番の「落ち着く音」はお母さんの声や心臓の鼓動のはず。

「鬼から電話」というアプリをご存知ですか? 子供が親の言うことを聞かない。そうすると子供あてに電話がかかってくる。画面には鬼が出現。親の代わりに子供を叱ってくれるというもの。子供を叱るのは鬼ではなく親の最大の責任なのでは?

「子育てのしんどさを知らない男親に言われたくない!」と思われるかも知れません。このことは私も深く反省しなければならない。また「本当にこれでいいの?」と感じてしまう私は古いのかもしれない。でもこれだけは真実です。

「子育て」に限らず、人を育てるということは時間もかかるし手間も労力もかかるということ。親子の信頼、人と人との信頼は小さな信頼を根気強く積み重ねていく以外には作れないということ。これを「面倒くさい」と感じてしまって、他のものに「代行」させたり「シェア」させたりすると子供も大人も「育つ」ことはできないということ。「信頼」をつむぐことはできないということ。

以前、私の教え子の結婚式に出席しました。式の最後に父親が娘に対して贈った「詩」を紹介します。一読ください。皆さん、どうお感じになられますか?

娘よ

片手で洗濯をするな/片手で掃除をするな/「片手でできる」キャッチフレーズに考え方を見失うな

この世に簡単にできるものなど/何一つないのだから

ただ物事をカンタンに考えている人が言う/たわごとなのだから

娘よ

両手で抱きしめなさい/両手で幸せをつかみなさい

ほら 子どもの頃のように/両手を大きく広げて

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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