教育長あいさつ 令和3年2月号

ページ番号2002653  更新日 2021年2月8日

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写真:教育長

 

 

「だから私が続きを生きる」

 

 

 

 

 「そうか、主人公はこう思ったんだ」「僕だったらこうするかもしれないな」「驚き!予想していたのとは全く違う展開!」「彼はきっとこんな風景を見ているんだろう」「この人の考え方、私にそっくり」「へー、そうだったんだ、知らなかった」「この次、どんな風に話が進んでいくのかな」「この主人公の生き方、かっこいい」「なんだかわからないけどスッキリした」「もう一回読み返してみよう」…。

 「清瀬の100冊読書感想文コンテスト」の一次予選を通過した子供たちの作品を読んでいます。どの原稿用紙からも「想い」や「願い」、「気づき」や「発見」、「感動」や「共感」、「ワクワク」や「ドキドキ」、「想像」や「創造」があふれ出ています。そしてそれらが素直で飾らない子供らしい言葉で表現されていたり、また逆に大人が負けるほどしっかりと整理されて書かれていたりして心底感心します。

 審査の途中ですので学校名や氏名を明かすことはできませんが、是非皆さんも子供たちの瑞々しい感性と表現を味わってみてください。きっと、日常の忙しさの中に埋もれてしまっている、気づきや想い・願いを、改めて私たち大人に気づかせてくれることでしょう。

〇もしかしたら(ダンゴムシには)もっとすごいところがあるかもしれません。もっともっと、ダンゴムシのことをよく知りたくなりました。(2年生 「ダンゴムシ 見つけたよ」を読んで)
〇私がとくに気になったところはぜんぶで三つです。一つ目はしんぱいになったところです。(略)。二つ目はおもしろかったところです。(略)。三つめは、この本で一番すきなところです。(略)。(2年生 「おかえし」)
〇キッチンの窓からは、やわらかな緑におおわれた山々や、白い雲がぽっかりぽっかりながれているのが見えます。私もかおる君と一緒に、景色を眺めているような気分になりました。(2年生 「おおきなきがほしい」)
〇わたしはこのほんをよんで、あたまがよくなったかんじがしました。どうしてかというと、ふだんはきにしていなかったうんこのことをおしえてくれるからです。(1年生 「うんこのえほん」)
〇僕は動物やこん虫が大好きです。だからもっと知りたいと思いました。(中略)自分にとって新しい何かがわかった時のよろこびをぼくも味わいたいです。(3年生 「パンダの手にはかくされた秘密があった」)
〇ぼくのお母さんのおなかに、赤ちゃんがいました。そのことを知って、ぼくはうれしかったです。でもその赤ちゃんは、おなかの中で死んでしまいました。そこで、この本を選びました。(3年生 「こいぬがうまれたよ」)
〇この本を読み終わって、私は自分も正義について考えたいという気持ちになりました。ふだんは良い心が悪い心を押さえているけど、いつも良い心が勝っているわけじゃないということがわかったので、これから良い心が勝つよう少しずつしていきたいです。(4年生 「私が正義について語るなら」)
〇私の妹は、保育園の行き帰りは、時々使う車より、いつもの自転車や歩きが好きだと言っています。どうしてなのかと思ったら、「虫とか鳥を見たり、鳴き声を聞いたりできるし、暑い寒いもわかるから」といっていました。私も自然の中のいろいろな発見が大好きなので、納得しました。(4年生 「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」)
〇もし、明日自分の命がなくなるんだとしたら、やりたいことを全部やり、後悔したくないですが、自分がいつ死ぬかわからないから、毎日を大切にしていきたいと思いました。(5年生 「夏の庭」)
〇私はホームズが事件を解決するところを読んで、今まであった算数の解き方を考える時のことと重なりました。(中略)これから何かを解決する場面が、生活の中であった時に、他の考えを「絶対に違う」等と思わずに、「これもあるかもしれない」と受け入れながら、見通しをもって考えてみようと思います。(5年生 「シャーロックホームズまだらのひも」
〇私も新聞係になったからには、魅力のある、だれも傷つけない、みんなが笑顔になれるような新聞を創りたいと思いました。(6年生 「「こちらランドリー新聞編集部」」
〇充実と楽しいはイコールではない。(中略)苦手な体育。ランニングの「あと一周」を頑張ったり、「運動苦手だから」とあきらめたりせずに、「今はこれがいけなかった。次はこうしよう」と思えるよう努力をしてみる。そんな小さなことの繰り返しが、充実した人生を送るということなのではないだろうか。(中学1年生 「いちご同盟」)
〇私には、将来音楽の先生になりたいという夢があります。その夢が実現した時には音楽の楽しさだけでなく、人は決して人を差別してはいけない、そのためには自分というものを強く持ち、人の意見には耳を傾けるが流されてはいけないという教えを伝えていきたいと思います。(中学2年生 「アンネの日記」)

 まだまだ紹介したい「思い」「願い」「気づき」「発見」…、がたくさんあります。でも、このまま続ければ子供たちに対する「エール」を書くスペースがなくなってしまいます。入賞作品は教育委員会Hpに掲載予定です。是非、全文をお読みください。きっと「子供たちは未来を創るスーパースター」であることを実感いただけるはずです。

 さて、入選を果たした子供たちへのエールは、こんな私の体験談を通して伝えたいと思います。

 今、ある自治体で国語の教師として頑張っている私の教え子。中学時代「いじめ」にあって教室にいられなくなった彼女は、図書準備室を居場所に選び、本に囲まれることで心を癒す2年間を送りました。片手に本を抱えて卒業していくほどの「本の虫」でした。

採用試験に合格した年、私のもとに彼女から年賀状が届きました。そこには「中学時代のいじめられた経験がなければ今の私はない」と書かれていました。その時図書室で読んだ「二十四の瞳」がその後の人生を決定づけたそうです。

平成27年の歌会始で最年少入選者となった15歳の女子高生はこんな歌を詠んでいます。「この本に すべてが詰まっているわけじゃない だから私が続きを生きる」。まさに私の教え子は大石先生の「その後」を生きているのかもしれません。

本にはその人の人生をそっくり変えてしまう力があるのです。入選者の中から将来「ダンゴムシ博士」が出るかもしれません。また、国際会議で演説した16歳の少女、グレタさんのような地球の環境を守るリーダーとして活躍する人も出るかもしれません。人を偏見のまなざしで見たり、差別したりすることを決して許さない、強さと豊かさを併せ持った子供を育ててくれる先生が生まれるかもしれません。

いや、そんな大きなことでなくてもいいのです。「この本と出会えてからほんのちょっと優しくなれた」「自分を見つめ直すことができた」「自分の可能性が見つけられた」「未来への夢と希望が膨らんだ」…。こんな「自分の中の小さな変化」を、これからも本を通してたくさん手に入れ、大切に育てていってください。いつしかあなたの人生において大きな「生きるエネルギー」「成長の栄養素」となってくれるはずです。

最後にこんな言葉をプレゼント。「本を読むことが読書なのではありません。自分の心の中に失いたくない言葉のたくわえ場所を創り出すのが読書なのです」(永田弘)

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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