教育長あいさつ 令和4年5月号
今月の「一語」 「たった一人でも教師になった意味がある」
若き日の私の夢はオーケストラのプレーヤー。音大卒業と同時に受験した入団試験に全て落ち、仕方がなく教師になった「落ちこぼれ組」。夢があきらめきれずに退職届を持ち歩いていました。
そんな教師がよい授業などできるわけがありません。蚊の鳴くような声でしか歌わない、リコーダーは忘れてくる、勝手なおしゃべりが止まらない、つまらなそうな表情、ふざけた態度…。
「やはり教師という仕事は合わなかったんだ」…。所属していた2年学年主任のK先生に退職の相談をしました。その日の夜、盃を傾けながら彼が私に伝えてくれた言葉、それが今月の一語です。
「確かに坂田の授業はひどい。お前に教わった生徒はかわいそうだ。でもな、お前はB子が一生懸命歌っているのは知っていたか? 実は彼女は去年まで音楽が大嫌いで合唱祭の時も一切口を開かなかった生徒だ。彼女は坂田の授業を受けて何かを感じ、何かを考えたのかもしれない」
「一人でもいいじゃないか。一人でも坂田の授業で音楽が好きになった生徒がいたらお前は教師になった意味がある」。
彼は続けます。「今は一人でもいい。しかし3か月後には二人にしろ。半年後は四人、一年後には八人にしてみろ」「それがプロというものだ」…。涙が止まりませんでした。その夜、私はやっと退職届を破り捨てることができました。
今、私がこうして教育に携わっていられるのはK先生がいてくださったから、そして彼の「一語」があったからなのです。
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