教育長あいさつ 令和3年11月号

ページ番号2004255  更新日 2022年4月28日

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写真:教育長

 

「機械には絶対にできないこと」

 

 11月13日(土曜日)、アミューホ-ルにて、健全育成委員会主催の「第37回 私の体験・主張発表会」が開かれました。コロナが席巻した令和2年度は紙上発表の形式をとったため、2年ぶりの開催。コロナが「鳴りを潜めている」とはいえ、第6波の危険性が指摘されていることから、令和3年度も内容を簡略化し作文とポスターの二部門で実施し、大賞に選ばれた子どもたちの表彰が行われました。

 表彰を受けた12名の子供たちに共通するのは「社会的視点」。すなわち「身近に起きた出来事」から「社会の出来事」へと視野を広げ、そこから課題を見つけ出し、自分なりの解決方法を考え、それを発信しようという姿勢。この視点は「自分も社会の一員である」という意識を高めるし、「守られる存在から守る存在」へと心の成長を促します。学習指導要領で謳う「社会に開かれた教育課程」を具現化した子供の姿でもあります。

 もう一つは「他者視点」。これは「思いやり」とか「優しさ」とか「気づかい」とかいう言葉に置き換えてもよいと思います。「相手はきっとこう感じているのでは…」「こう言う言い方をしたら、この人は心地よくすごせるのでは…」「この人はきっとつらい気持ちなんだろう…」。すべて「他者=あなた=You」の視点で物事を観ようとする姿勢。

 「人は視点がIからYouに変化したときに本当の成長を迎える」と言われます。当然のことながら幼き子供の話は全て主語が「I」。「自分は○〇がしたいのに」「僕は××と言ったのに」「私は△△が食べたいのに」…。それが「他者視点」でものを見たり考えたりする経験を重ねることで、徐々に主語が「You」に変化し、「あなたは~」「君は~」「あの人は~」で語るようになっていく。

 しかし現代社会は「I」の視点が充満しています。「自分さえよければ…」の意識。その極端な例が10月31日に起きた「京王線刺傷事件」。犯人は「人を殺して死刑になりたかった」といったそうです。あまりに身勝手な「I」の視点ではありませんか! 「自分」を主語にして語る幼少期から全く「心の視点」が成長していないのです。

 どうか皆さん5名の作文を読んでみてください。7名のポスターを観てください。彼らが「You」の視点をしっかりと持っていることを実感していただけるはずです。いや、12名だけでなく応募してくれた1,000人をも超える清瀬の子供たち(作品総数は1,399。作文711、ポスター462)が、この「社会的視点」「他者視点」を持っているのです。

 閉会の挨拶を任されました。12名の子供たちに伝えたいことは山ほどあります。上記した「社会的視点」「他者視点」の話もプレゼントしたかったけれど、もっとわかってほしいことがありました。それは「人としての誇りを持ち続けて生きよ」というメッセージ。

 渋谷市長による来賓あいさつを聞いて非常に焦りました。なぜなら市長のメッセージも「AI時代だからこそ清瀬市民としての誇りを失わずに生きよ」だったからです。直前の変更も考えましたが、いみじくも「長」と名の付く、私たち二人が、同じ思いを語るということは、それだけ重要なメッセージであることを、子供たちにわかってもらえることになると思い、予定通りの話にしました。以下紹介します。


 どんなに科学技術が発展しても、人間にはできるけれど、機械には絶対にできないことがある。それは「心で感じ、頭で考え、自分の意志で行動する」ということ。

 如何に姿かたちを人間任いせようと、アンドロイドは心がなければ「感じる」ことはできない。AIはたくさんデータを使って分析をすることはできても「考える」ことはできない。機械は人間がデータをインプットしない限り、自分の意志で「行動する」ことはできない。

 本日発表してくれた12人の子供たちは、それぞれが出会った出来事を通して、たくさん感じた。そして誰かのため、社会のために考えた。そして5人の子供たちは作文という方法で、感じ、考えたことを伝えようと自らの意志で行動した。

【清瀬中学校3年 関 美羽さん】
○お母さんの出産で命の尊さを感じた。そしてコロナによって赤ちゃんが亡くなったニュースに触れて「生きるとは何か」を考えた。

【清瀬第四中学校2年 荻原青空さん】
○耳の不自由なお母さんとエレベーターに閉じ込められたことで「聞こえないこと」の苦労を改めて感じ、そして被害者の体験談を通して、全ての人にとって優しい社会になるにはどうすればよいか考えた。

【清瀬第十小学校5年 藤森こと葉さん】
○登校を嫌がる妹の姿を通して、たくさんの人の支えがあることを感じ、そしてつながり、絆を深めるため には笑顔、思いやり、あいさつが大切なんだと考えた。

【清瀬第四小学校6年 高橋 希さん】
○認知症のおばあちゃんとの接し方がわからなくて不安を感じ、でもそんなおばあちゃんの笑顔を見たくて、接し方を考え、ゆっくり、優しく話すことが大切だということが分かった。

【清瀬第十小学校3年 松田心菜さん】
○オリンピックの五輪を通して家族の大切さを感じ、コロナ禍だからこそ家族とのつながりを大切にし、その輪を広げていきたいと考えた。

 7人の子供たちは感じ、考えたことを、ポスターで発信すべく行動を起こした。その想いはたくさんの人の心を動かすことだろう。

【清瀬第四中学校2年 梨木彩也香さん】
○あなたのポスターを観て、道端の小さな花でも大切にしようと思ってくれる人が必ずいるはずだ。

【清瀬第五中学校2年 深井桜心さん】
○深井さんの想いを受け、いかに小な命であっても大切にし、行動を起こしてくれる人が必ずいるはずだ。

【清瀬小学校6年 板倉育心さん】
○あなたのメッセージを通して、電車内で勇気をもってお年寄りに席を譲ろうと決意した人がいるはずだ。

【芝山小学校3年 吉原あきさん】
○ポイ捨てをしようとしたときに、吉原さんのポスターを思い出して思いとどまってくれる人がいるはずだ。

【清瀬第四小学校5年 松居 楓さん】
○あなたのポスターにより、手間を惜しむことなく「ゴミの分別をちゃんとやろう!」と心に決めた人がいるはずだ。

【清瀬第十小学校6年 佐藤 玲さん】
○佐藤さんの「私たちの地球をこの手で守る」というメッセージにより、小さな行動を起こす人が世界中に必ずいるはずだ。

【清瀬ふじみ幼稚園年長 河野昌大さん】
○あなたのポスターを見て思わず笑顔になり、その人の笑顔を見た人がまた笑顔になり…、そんな社会を創りたいと願う人が現れるはずだ。

 コンピュータはどんどん進化する。どんなに便利な世の中になっても、またコンピュータのように難しい方程式は解けなくても、歴史上の出来事の年号をすべて覚えていなくても、辞書に載っている漢字が全部読めなくても、私たちは人間としての誇りを失ってはいけない。機械には決してできない「心で感じ」「頭で考え」「意志を持って行動する」人であり続けなければならない。

 12人の子供たち、そして惜しくも大賞には届かなかったが、「感じ」「考え」「行動」してくれた41人の子供たち。いや、今回の取り組みに応募してくれた1,399人の子供たちは、「人にしかできないこと」をやった。それも、聞く人、見る人の心を動かすような「素晴らしいこと」をやってのけたのだ。これからも人として生きる誇りをもって、社会を創っていってほしい。

 最後にアフリカのことわざを紹介して終わりの言葉に変える。「もしも世界中の小さな村で、小さな子供たちが、小さな善いことをすれば、必ず世界は変わるだろう」。

 自信をもって宣言する。この宣言はこの場にいる大人のだれもが賛同してくれるはずだ。「私たち大人はこれからの清瀬を、日本を、いや世界を、君たちに託す!」と。

 

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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