教育長あいさつ 令和3年8月号

ページ番号2003589  更新日 2021年9月3日

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写真:教育長

 

「オリ・パラを通して賢くなろう!」

 8月7日、東京2020+1オリンピックが閉幕しました。物理的な時間の面でも、精神的な心の面でも開幕まで何と長かったことか。反面、始まってしまったらこの17日間はなんと短かったことか。「絶対的な時間は存在しない」とどこぞのSF作家が書いていたけれど、まさに手間のかかる調整・準備の時間は長く感じられ、充実した時間は短く感じるという「時計の時間と心の時間のズレ」を多くの国民は実感したのではないでしょうか。

 大会を開催したことへの是非について触れようとは思わないけれど、この17日間の日本人選手の活躍に私たちはどれだけ勇気をもらったことか。確かに開催するにあたってのリスクはあったかもしれないけれど、もしも本大会が中止になっていたら…、こう思うとアスリートたちだけでなく、大会にかかわられたすべての皆さんに感謝の思いでいっぱいです。

 私たちはなぜこんなにも五輪に湧きかえるのでしょうか。「全力で取り組む姿はどんな人をも感動の渦に巻き込む」という言葉のとおり、不透明で不確実な世の中であるが故、人々が「感動」を求めているのかもしれません。一分一秒を全力で生きる彼らに自分の「夢」を乗せているのかもしれません。「彼らに負けないで頑張ろう!」と明日を生きるエネルギーをもらおうとしているのかもしれません。彼らの姿に少しだけ「嫉妬」したり「羨望」したりしながらも「目標に向かって生きていたあの頃」を思い出そうとしているのかもしれません。「日本の誇り」をもう一度自らの中で確かめたいという願いがあるのかもしれません。

身内でも知り合いでもなんでもなく「同じ国に生まれ育った者同士」であるというだけの間柄なのに、また、同じ国に生まれたわけもなく育ったわけもないのに、我が国の勝利のために共に汗を流してくれる人を仲間として迎え入れ、肌の色や言葉の違いを乗り越えて、共に我がことのように喜び、共に我がことのように涙し、共に我がことにように胸を張り…。こんな「絆の国 日本」の一員であったことを、そして「つながりの国民 日本人」の一人であったことをオリンピックは再確認させてくれました。どんなに社会がグローバル化しても、きっと私たちは「日本」「日本人」というアイデンティティを失うことはない…。2020+1大会はこんな「当たり前だけれど決して忘れてはいけない事実」を、私に改めて思い出させてくれたのです

 各校に協力いただいて「5名の教育委員による二つのプロジェクト」を発信しました。その一つが「オリンピック・パラリンピックを通して社会を変えようプロジェクト」。2020+1大会を通して、私は上記のとおり「日本人としての自分」を再確認できましたが、清瀬の子供たちにも、自分は何を考え、何を学んだのか、自らの何を変えたいのか、他者に何を訴えたいのか、自分には社会のために何ができるのか、世の中のために何をすべきなのか、より良い日本を創るために何をやるのかを、感じたり、考えたり、振り返ったり、整理たり、表現したり、自分ができる小さな行動に移したりする…、そんな学びを与えたかったからです。

 早速、一人の小学校5年生がプロジェクトに応募してくれました。現時点では学校名や氏名などの詳細は伏せなければなりませんが、内容はお伝えできます。是非一読ください。

 東京オリンピックは「チェンジ」のオリンピックだった。例えば…。
 2020年から2021年にチェンジ! 開会式の担当者もチェンジ! 国立競技場の建築家もチェンジ! ゴマークもチェンジ! なんと言ってもコロナ禍での無観客開催で学校観戦が中止になり残念だった。
一方でお互いの「違い」を認めたりリスペクトしたりすることが見られた。史上初トランスジェンダー女性の出場や、体操でレオタードのほか、ユニタードを使用した。
 多様性を感じられたオリンピックだったと僕は思いました。
 短いレポ-トですが、この児童にとってたくさんの「学びの種」が詰まっていることにお気づきでしょう。「チェンジ」のキーワードで開催までの国、組織委員会など大会をマネジメントする側の紆余曲折、試行錯誤、右往左往、混乱、ドタバタを指摘しています。それだけでも「批判的に物事を観る小学校5年生」として高く評価できますが、これらの「チェンジ」がなぜ起こったのかを掘り下げれば、差別問題、経費問題、盗用などの不正問題など社会的な課題に視野が広がっていきます。

 またもう一つのキーワードである「多様性(=ダイバーシティ)」についても、小学校5年生としての「社会を見つめる目」は驚くほど優秀です。しかし自分の学校生活と照らして考えさせれば、いじめは「多様性」を認めることができないが故に起きる問題であることに気づくし、その視点を世界に向ければ、戦争や紛争に関する問題意識へとつながっていくことも期待できるでしょう。 

すなわち2020+1大会を一つのきっかけにして、学びはいかようにも社会につながり、深まっていくのです。残念ながらメダルには届きませんでしたがサッカーという競技一つとってみても同様。メッシ選手の移籍が話題に上がっていますが、そこから経済、歴史、食、言語、生活習慣など、その広がりは無限です(【図1】ウエビングマップを参照)。野球でも柔道でも、フェンシングでもバスケットボールでも、また清瀬出身の久保田愛夏選手が活躍したカヌーでも(メッセージをやり取りした第六小学校の6年生は特に!)、下宿体育館でオリンピックに向けた練習を公開してくれた新体操でも(見学に行った子供たちは特に!)、すべて「社会につながる学び」「深く考える学び」のきっかけになるのです。

 この「社会につながる学び」「深く考える学び」に子供たちを誘うのは誰でしょう。私たち大人です。中でも「教師」という職業に就く私たちは教育のプロとして、誰よりもその重要性を理解し、誰よりもその役割を期待され、誰よりもその育成に大きな責任を負っているのです。

 ではどうすれば子供たちを「社会につながる学び」「深く考える学び」に誘うことができるのか…。それは(1)「なぜ?」「どうして?」「どうすれば?」の問いをあらゆる機会を通して与えること、そして(2)子供たちの頭の中に【図1】のようなウエビングマップを描かせること(実際に書くともっと良い)、それと共に、(3)今回私たちが発信したような「自分の深い学びが社会につながっていることを実感させる」機会を可能な限り与えることです。

 (1)(2)は現場の先生方、そして保護者の皆さんにしかできないこと。お任せします。教育委員会は、図書館を使った調べる学習コンクールや私の体験主張発表会作品募集、清瀬の100冊読書感想文コンテストなど、(3)の環境整備に可能な限り力を尽くしていきますが、社会に目を向ければそのチャンスはたくさんあります。例えば新聞の投書欄。産経新聞の若者の投書欄「ひこばえ倶楽部」では、小中学生が400字前後で立派に自己主張しています。日本教育新聞には「日本農業検定栽培コンテスト」や「小学生夢をかなえる作文コンクール」等、子供が「社会につながっている自分」を実感できる機会が数多設定されています。

 しつこいようですが繰り返します。これも「社会総がかりで子供を育てる」一つなのです。
 

図1

教育長 坂田 篤(さかた あつし)

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