教育長あいさつ 令和7年5月号
今月の「一語一会」は、私が初任の時にお世話になったG校長の一言。「力がないなら『ありがとう』と言え」です。
40年前、新任教師として教壇に立った私が悩んだこと。その一つが「ほめ方」。教育の原点は「ほめて伸ばす」と教わってきたものだから、とにかく生徒をほめることを己に課しました。
しかしほめても思いが伝わらない生徒がいる。ほめたつもりだったのに意欲がどんどん下がっていく生徒がいる。ほめられて喜ぶと思ったのに表情が曇る生徒がいる。ほめればほめるほど私から離れていく生徒もいる。いつしか生徒から笑顔が消え、学級全体が暗い雰囲気に包まれていく…。
キャリアを重ねて気づくこと、それは「ほめる」は大変高度なテクニックが必要だということ。何を「ほめる」のか、いつ「ほめる」のか、どうやって、どんな言い方で「ほめる」べきなのか…。「ほめ方」は一つの学問になるほど難しく、「正しくほめる」ことは、学級経営、教科経営、同僚との関係、生徒や保護者との信頼関係など、職のすべてに影響するテーマなのです。
「どうやって生徒をほめればよいのかわからないんです」…。私の悩みを聞いてくれたG校長、こんな言葉を返してくれました。「坂田はほめ方がわかっていない。それならほめる代わりに『ありがとう』と言え」。
「ありがとう」は自己肯定感を高める最高の言葉。笑顔を引き出す強力なアイテム。「ありがとう」の5文字なら初任の私でもいえる。
朝、出欠確認で大きな声で返事をしてくれた生徒に「ありがとう、先生も元気になった」。授業中、正しい発声で歌ってくれた生徒に「ありがとう。みんな、Aさんの真似をしよう」。真面目に掃除に取り組んでくれている生徒に「ありがとう。教室も喜んでいるよ」。部活動で後輩の面倒を見てくれた生徒に「ありがとう。教わった後輩はきっとうまくなる」。日常の学校生活の中で「ありがとう」を言えるチャンスはいくらでもある。そこから会話も笑顔も広がっていく。
「ありがとう」の5文字は親子の関係でも「魔法の力」を発揮します。「夫婦関係」でも「お隣さん」の関係でも同じだし、「職場の上司・部下、同僚の関係」でも全く同じ。たったの5文字が、人と人との関係を豊かにし、地域を変え、社会を元気にしていくのです。
ちょっと元気が失われている日本。「ありがとう」の魔法の力を生かす時が、「今」なのかもしれません。
より良いウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。
このページに関するお問い合わせ
教育企画課企画係
〒204-8511
東京都清瀬市中里5-842 清瀬市役所2階
電話番号(直通):042-497-2537
電話番号(代表):042-492-5111
ファクス番号:042-495-3940
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。